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2018年02月01日 優先株式について

優先株式について

 

 

数ある種類株式の設計方法の中で、もっとも種類株式の設

計に関し、検討に上がるのは、優先株式に関することではな

いでしょうか。

会社法において、優先株式とは、剰余金の配当又は残余財

産の分配に関して、普通株式に優先して配当等を受けるとい

った有利な条件が付された株式のことをいいます。

今回は、この優先株式のことについて少しだけお話させて

頂きます。

 

IPOにおける利用例

 

前項にて優先株式の意義について触れさせて頂きましたが、

成長意欲の旺盛な企業等で利用される場合、折角稼いだ資金

を配当に回すということはせずに、次なる成長ステージに向

けて人材の獲得・設備投資に資金を利用されることになるか

と思いますので、残余財産の分配に関し有利な条件が付され

るかたちで設計されることが多いのではないかと考えます。

それでは、残余財産の分配に関し普通株式に対して優先す

る株式の内容とはどういった利用方法が考えられるのでし

ょうか。

代表的な利用方法と思われるのはたとえば次のような場

面になります。

創業者が100万円を出資して設立した会社が、今回査定

により10億円の価値がつき、ベンチャーキャピタル(以下、

「VC」といいます)から4億円の出資を受け、これに対し

VCに普通株式を交付した場合です(これにより当該会社の

株式を40%保有とします。)。

その後、順調に当該会社が成長をすればよいのですが、残念

ながら、そうもいかず企業価値が毀損して1億円となってし

まった場合、致し方なく株式の売却先を見つけられるずに、

会社を解散させた場合の残余財産の分配がどうなるかを考え

てみたいと思います。

創業者とVCの持株比率は6対4となりますので、残余財産

が1億円残った場合、これを持株比率により分配しますと、

4億円の投資に対して、4000万円が分配され、3億6千

万円の損をする事となります。

しかし、優先株式とすることで、普通株式を保有する創業者

に優先して、1億円の分配を受けることができます。

そこでVCは望ましくないこのような局面に至ることも想定

して、優先株式を設計する例をよくお見かけいたします。

 

上場企業における利用例

 

最近の例ですと、日本を代表する自動車会社であるトヨタ

自動車株式会社の例があります。

2015年に「AA型種類株式」というものを発行いたし

ました。こちらの種類株式は上場企業でありながら、株式譲

渡制限が付された種類株式となっているものの、発行価額相

当額での買取ができること、毎年の配当が保証され、年々一

定率で配当金額が上昇すること等が設計された種類株式と

なっております。

これはトヨタ自動車株式会社として、短期的な業績の向上

等を目的とした株主を歓迎せず、中長期的な保有を目的とし

た株主との間で腰を据えて、事業を行っていく意図があるよ

うです。

 

おわりに

 

上場企業においては、プレスリリースにより開示が要求さ

れていることから、当該会社がどのような種類株式を発行し

た又はする予定なのか、一読してみることが可能となってお

ります。

開示内容を拝見致しますと誠に複雑な種類株式の設計が

見られますが、よくよく読んでみますと、種類株式の内容か

ら、経営陣が考える意図が見えてくることがあるかもしれま

せん。

ただ、上記利用例でみる限り、各企業を取り巻く場面によ

り、たくさんの設計事例があり、どれも複雑な内容となって

いるようですので、種類株式の設計の際には熟慮を重ねる必

要があるといえそうです。