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権利の窓

2006年03月17日 民法入門12 「山田先生の事件簿 其の四」

物 主物及び従物 ―民法入門12―
「山田先生の事件簿 其の四」

すっかり、春になりましたね。
さくらがきれいです。
先日、私の甥がめでたく大学に入学しました。
その甥からこんな電話がありました。

文麿 「おいちゃん。文麿です。先日は結構なものを頂きましてありがとうございました。」

山田 「よー、文ちゃん。入学おめでとう。君もちゃんと御礼のあいさつができるようになったんやなあー。昔はボーっとしとったのに。」

文麿 「ぼくも大学生ですよ。あいさつぐらいは。ところで、お祝いに頂いた万年筆の件なんですが・・・」

山田 「おー使ってくれてんのか?」

文麿 「ぼくの友達がめずらしがって貸してくれって言うんですよー。でも、キャップにダイヤ埋め込んでくれたやないですかー。だから、ペンだけ貸そうとしたら、ペンとキャップは主物、従物の関係だから全部貸してくれって言われて・・ おいちゃん、意味わかりますー?」

山田 「ワシを誰やとおもってんねん!
民法ぐらいわかっとるがな。主物、従物というのは、要するに、主物の価値、その用途を助けている従物を主物とワンセットにして売買や賃貸借等させることが当事者の通常の感覚に合致するし、またその主物・従物自体の価値も損なわれなくてすむ。だから、主物を売ったら従物も売ったことに、主物を貸したら従物も貸したことにしましょう。そこがこの主物・従物の制度趣旨なんや。」

文麿 「おいちゃん。主物っていうのはメインのものやからイメージしやすいけど従物って例えばどんなん?」

山田 「そうやな、法律的には従物の要件は
(1)  継続的に主物の効用を助けること
(2)  主物に付属すると認められる程度の場所的関係にあること
(3)  主物と同一の所有者に属すること
(4)  それ自体独立性のあるもの
まあ、そんなことより、具体例を挙げると、(主物・従物)(ペンとキャップ)、(刀と鞘)、(母屋とトイレ)・・・で、この主物・従物の関係が認められると、さっきも言ったけど従物は主物の処分(売買、賃貸等)に従うことになるんだよ。(民法87条2項)」

文麿 「よくわかったわ。」

山田 「せっかくやから付け足しすると、民法87条は有体物(民法85条)である従物に関する規定だけど賃借権のような無体物にも適用されるのかが問題となったことがあるんや。(有体物については、新・権利の窓11号をご参照下さい。)

文麿 「難しい話はいいですわ。」

山田 「要するに、判例・通説は87条2項は賃借権のような無体物にも適用されるとした。理由は、さっき説明したのと同じ。」

文麿 「もうわかりましたんで。これで。」

山田 「例えば借地上の建物を売買した場合特約がない限り建物の買主は借地権も取得するんや。(この取得した借地権を土地所有者に権利主張できるかどうかという話題については債権法でのお話しとなります。)
つまり、ここでの従物(正確には無体物だから「従たる権利」という。)は賃借権ということや。」

文麿 「ちょっと時間が・・」

山田 「話もどるけど、その友達が言ったのは以上のことを知ってて言うたんとちがうか?」

文麿 「そしたらやっぱり、キャップも一緒にして貸さなあかんのかー。」

山田 「いやいや、そんなことはないよ。民法87条2項は任意の規定だからキャップは貸さないという取り決めもできるんやで。
でも文ちゃん、まさかほんまにダイヤと思ってんのか?あれ、ガラス玉やで!」

文麿 「わかっとるわ!!!!!」

ガチャン(電話の切れる音)
そうなんです。入学祝いの品に不満を持つ
甥からのイヤガラセ電話だったんです。

(作成者 岩間巨敏)