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2006年07月18日 民法入門18 「詐欺vs強迫」

法律行為 意思表示 詐欺・強迫 ―民法入門18―
「詐欺vs強迫」

 今回はみなさんに馴染みのある詐欺・強迫についてのお話です。

1-1詐欺
巷でも、お騒がせしている‘俺、オレ詐欺’お年寄りを狙って、あたかも孫のふりをして「事故にあったからすぐお金を振り込んでくれ」と一方的に電話で告げる。可愛い孫が困っていると思い、言われるがままに架空口座に振り込む。お金を振り込んだ後、気になって孫に電話してみると・・・。とまあこんな感じの仕組みになっているようです。
詐欺とは人を騙して錯誤に陥らせることです。オレオレ詐欺の場合、お年寄りを騙して、孫が困っているとう錯覚に陥らせお金を支払わせる行為を言います。
但し詐欺によって何か行動をした場合、その行為は取り消すことが出来るのです。
そして、取消しがなされるとその行為は初めから無かったことになります。
まぁ今回のように取り消す相手が不明な場合、結局泣き寝入りとなってしまいますが。

1-2第三者による詐欺
直接騙されたのではなく第三者、例えば、Aからお金を借りるのに保証人が必要となったBが、本当は預金など無いのに「来月にはお金が入るのだが、急遽必要となったお金を借りるのに保証人が必要なんだ」と言ってCを騙し保証人になってくれるように頼み、CがBの言葉を信用しAとの間で保証契約を結んだとしましょう。
今回の場合契約を結んだのはAとCですが、詐欺を働いたのはBということになります。
こんな時でも果たして、Cは「話が違う!契約は取り消す!」と言えるでしょうか?
答えは・・・
本来なら被害者であるCを保護しAC間の保証契約をCが取り消すことを可能にするべきですが、もしCの取り消しを常に可能とするなら、詐欺に関与していないAの取引の安全を著しく害することになってしまいます。したがって、BがCを騙した事についてAが知っていた時に限り取り消しが可能となるのです。

1-3取り消しと善意の第三者
詐欺を理由とする意思表示の取り消しは、善意の第三者に対抗することが出来ません。
具体的な事例を挙げてみましょう。
例えばAがBに騙されてBに土地を売却し、Bが更に事情を知らないCに転売した場合、Aが詐欺を理由に取り消したとしても、事情を知らないC(善意の第三者)には対抗できない、つまりCに対して土地の返還請求をすることができないのです。

2-1強迫
次に強迫についてです。
強迫とは人に害悪を示して恐怖心を生じさせ、その人の自由な意思決定を妨げることです。分かり易いすく言うと脅されて契約させられたり、無理を強いられたりすることです。
詐欺と同じように強迫されて契約をした場合も取り消すことが出来ます。脅されて欲しくもない高額な商品を買う契約をさせられた経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。ちなみに私はいわゆるキャッチと呼ばれる方々にお声をかけていただいたことがございません。買ってくれそうに無いからですかね?キャバ嬢の勧誘は何度もあるのですが。

話が打線してしまいましたので元に戻しまして、詐欺と強迫の効果の違いについて、先ほどの1-2の例を強迫に置き換えて第三者による強迫について考えてみましょう。
XがA氏に強迫され、B社と契約を結んだとします。この場合XはB社が強迫について知っていたか否にかかわらず、契約を取り消しすることが出来ます。

次に1-3の例を強迫に置き換えて考えて見ましょう。
AがBに強迫され、Bに土地を売却しその後BがCに転売したとします。AがBに取り消しの意思表示をした場合、Cが例え強迫について知らずに購入していたとしてもAは取り消しをCに対抗でき、Cに対して土地の返還請求をすることが出来るのです。
つまり、強迫されたものは、騙された者よりも、その保護が厚いことになります。 
詐欺の場合には、騙される方にも何らかの落ち度があるからといったとこでしょうか?!最近の詐欺事件は実に巧妙な手口が多いようで、騙されていることに気づかないこともあるとか。それはそれで幸せだと私は個人的には思うのですが・・・ 

いずれにせよ詐欺も強迫もされないにこしたことはありません。甘い言葉に騙されて軽々しく契約をしたりしないように注意しましょう!!

(作成者 松浦 瑞江)