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2006年10月26日 民法入門24 「名前を教えて!!」

代理 代理行為 顕名主義 ―民法入門24―
「名前を教えて!!」

みなさんこんにちは。今回は「顕名主義」についてお話しします。
まずは、顕名主義というものがどういうものか、なぜ必要とされているかをみていくことにします。

<例1> Aは自宅に飾る絵画を購入しようと考えましたが、何を買えばいいのか見当もつきません。そこで、絵画に詳しいBに購入を委託することにし、Bは面識のないCとの間で絵画を購入する契約を結びました。その際、BはAの代理人であることをCに告げませんでした。

前回までに述べられていたとおり、代理には、契約などの法律行為の効果を行為者以外の者に直接負わせるという性質があります。ということは、<例1>においても代理行為が成立するのであれば、Cは「Bに売ったつもりがいつの間にかAに売ったことになっていた!」なんてことになる可能性があるのです。

このことは特に何の問題もないように思われるかもしれません。しかし、売買した絵画が仮に500万円もするもので、CはBの資力を見込んで取引に至った・・・とすればどうでしょう。買主が急にAに変わるということは、やはり大きな問題になってくるのです。「誰が買うのか」あるいは「誰から買うのか」ということをあらかじめ知られないと、相手方は安心して取引ができなくなってしまいかねません。

そこで民法は、本人(A)に効果を帰属させる場合には、代理人(B)が相手方(C)に代理行為である旨を伝えなくてはならないこととし、代理であることを示さないで行った契約は、代理人が代理人自身のために行ったものとみなす、つまり代理行為としては認めないとの規定を設けているのです(99条1項、100条本文)。これを代理における顕名主義といいます。顕名主義を導入することで、相手方が受けるべき利益と円滑な取引(「取引の安全」といいます)の双方を保護しているわけですね。

<例1>にあてはめると、Bは自分のために絵画を買ったとみなされてしまうということになります。
では、次の場合はどうでしょうか。

<例2> 絵画だけでは飽き足らず、彫像を購入しようと考えたAですが、何を買えばいいのか見当もつきません。そこで、彫像にも詳しいBに購入を委託することにし、Bは友人であるDとの間で彫像を購入する契約を結びました。その際、またもやBはAの代理人であることをDに告げませんでした。

顕名主義の主な目的は、相手方が契約等の当事者を知りえないことから発生する不利益を回避するところにありました。ということは、行為当時、相手方が「誰が買うのか」という情報を知りうる状況にあった場合には、顕名の有無はあまり問題にならないということになります。
この点に関して民法は、明らかな顕名がなくとも、相手方が代理行為であると知った、もしくは知ることができた場合には代理行為を有効に成立させると規定しています(100条ただし書き)。

では<例2>にあてはめてみましょう。
確かに、BはDに対して代理人である旨を告げてはいませんが、Dが少し注意をしさえすれば、面識のあるBの行為が代理であることは十分に知りえたはずです。よって100条ただし書きの適用によりBの代理行為が有効に成立し、彫像の売買契約はAとDとの間で成立したことになるわけです。

最後に、少し特殊なケースをみて終わりにします。

<例3> 今度は車を購入しようと考えたAですが、やはり何を買えばいいのか見当もつきません。そこで、なんと車にも詳しいBに購入を委託することにし、Bは面識のないEとの間で車を購入する契約を結びました。その際、BはあたかもA本人であるかのごとく、契約書にAの名前を記載し、A名義の印鑑を押しました。果たして代理行為は有効なのでしょうか。

この場合、「誰が買うのか」という情報は正しく相手方に伝わっています。つまり、顕名主義によって保護しようとする相手方の利益や取引の安全が、契約の当初において既に守られていることになるのです。よって、顕名がない場合でも代理行為を有効に成立させることに何ら問題がないことになります。

<例3>では、車の売買契約は無事にAとEとの間で成立したことになります。

(作成者 小南 幸右)