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2006年11月08日 民法入門25 「代理行為の瑕疵(かし)について」

代理 代理行為 代理行為の瑕疵 ―民法入門25―
「代理行為の瑕疵(かし)について」

今回は、『代理行為の瑕疵』について見ていきたいと思います。まず“瑕疵”とは、簡単に言えば「きず」という意味です。代理人が間違った意思表示をしてしまった場合や冗談でした取引は、代理行為に瑕疵があるということができます。このような場合、民法はどのように規定しているのでしょうか。

本人ではなく、代理人自身が詐欺にあったり、強迫されたり、また思い違いなどをして何らかの契約を誤ってしてしまうことも当然あったりしますよね。そのような場合、他人に騙されてした意思表示や他人の強迫によってやむなくした意思表示などの善意・悪意・過失などがあったかどうかは、本人ではなく代理人を基準として判断されます(民法第101条第1項)。
例えば、本人Aが建物に詳しい人物であったとして、もし実際に建物を見ていれば建物に欠陥があることが発見できるくらいの能力を持っていたとしても、実際に見に行ったのは代理人Bで、Bが欠陥を発見できないまま、その建物を買ってしまえば、その契約は錯誤により無効となります。また、代理人Bが相手方Cから土地を買ったとします。しかし実はその土地はCが友達Dから、「財産を差し押さえられそうだから、この土地は君が持っていることにしてくれ」と財産を隠すために名義をCに移しただけのこと(ウソの意思表示は無効)を代理人Bが知っていて契約を締結した場合は、本人Aがその事実を知らなくても、その意思表示は無効となりますから、本人Aはその土地の所有権を取得できません。

以上のことは、代理行為の行為主体が代理人である点からすれば当然のことです。代理人は、本人から一定の行為をするよう要求されているとはいえ、意思決定は自分で行っているからです。これは以前に出てきた使者と対比するとわかりやすいかと思います。使者は、本人の意思決定を伝達・表示するだけなので、当然に使者が強迫や詐欺に遭った場合は、使者について判断することはありません。本人の意思表示と同じ意思表示をしたかを比べるくらいです。
しかし、ここで、本人の意思決定がなくても、本人が代理人をコントロールする余地がある限りにおいては、この代理人につき判断するという規定は適用されなくなります。上記の例で、建物に欠陥があったことを本人が知っていてそれを買わないよう指示できたような場合です。本人Aが代理人Bをコントロールできるうちは、本人Aは取消や無効を主張できません。また、代理人が、特に具体的に本人の指図に従い、法律行為をしたような場合も、民法は例外的に本人の悪意・有過失を考慮するとしています(民法第101条第2項)。
例えば、本人AがC所有の特定の建物を買ってくるように代理人Bに指示した場合において、その建物に欠陥があったことをAが知っていた、又は少し注意をすれば知ることができたような場合、Bが知らなくてもAはその契約が無効であることをCに主張することができません。

補足として、では、代理人が詐欺を行ったような場合はどうでしょうか。詐欺に遭ったのではなく、代理人の方が相手方に詐欺をしたような場合です。このような場合も代理行為に瑕疵があったということを相手方が主張して、取り消すことができると判例は言っています。しかし、厳密には101条の代理行為の瑕疵として規定されている条文は、代理人が詐欺を“受けた”場合を規定したもので、代理人が詐欺を“した”
場合を規定したものではないので、代理行為の瑕疵として取り消すことはできないという批判もあります。よってこのような場合は、96条1項の「詐欺又は強迫による意思表示は取り消すことができる」という条文を適用して相手方が取り消すことができる、としています。代理行為の結果成立する法律行為は結局は本人のものであり、本人がその当事者であるので、代理人の詐欺は相手方にとっては、当事者以外の者がした詐欺というべきではなく、相手方は本人に対して96条1項により詐欺による意思表示として取り消すことができるとしています。
代理行為に瑕疵があった場合、本人か代理人のどちらを基準として判断するかのポイントは意思決定の比重にあるといえるのではないかと思います。

(作成者 森元綾子)