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2007年05月10日 民法入門32 「○○したならば・・・」

条件  ―民法入門32―
「○○したならば・・・」

1.はじめに

みなさんこんにちは。今回は「条件」についてのお話です。
「来年大学に合格したらこの本をあげる」、「この本を貸してあげるけれど、来年大学に合格したら返して」というような約束を、みなさんも経験されたことがあるかもしれません。今回お話する「条件」とは、この「合格したら」の部分を指します。しかし、条件と一言でいっても内容は各種様々です。そこで民法は、それらの条件を類型化し、それぞれに規定を設けています。
以下では、条件の意義と効果について述べていきたいと思います。

2.条件の意義

条件とは、契約などの法律行為に付ける当事者間での特約をいい、法律行為の効果の発生あるいは消滅を、ある出来事が将来起こるか否かに委ねることをその内容とします。
民法では、「ある出来事が起こる」ことを「条件の成就」、条件成就によって法律効果を発生させるものを「停止条件」、法律効果を消滅させるものを「解除条件」と規定しています(以降、単に「条件」というときは、停止条件、解除条件の両方を指すものとします)。

ここでポイントとなるのは、条件となる出来事についてです。条件たる出来事は、①将来のものであること、②不確実なものであることの二つの要件を満たさなくてはなりません。
たとえば、「昨日札幌の天気が雨だったら~」という約束は、仮に当事者が知らなかったとしても、一般的には既に発生した事実であることから、解除条件あるいは停止条件としてはふさわしくありません。これは「既成条件」として別の取扱をすることになります(民法131条)。
同様に、「私が死んだら~」という約束も、その時期こそ不明であれ、将来必ず発生する事実であるので条件としては認められず、次回にお話する「期限(不確定期限)」となります。

3.条件成就

条件を付けた法律行為の効果は、その条件が成就しまたは成就しないこと(不成就)によってどう変化するのでしょうか。
停止条件付法律行為の場合、条件が成就すればその法律行為の効果が発生し、不成就であることが確定すれば法律効果は発生せず、法律行為に基づく権利行使ができないことになります。
対して、解除条件付法律行為の場合、条件が成就すれば法律行為の効果は消滅し、不成就であることが確定すればその効力は消滅しないことになります。
ここで、はじめに挙げた例を用いて具体的にみてみましょう。
一つ目の「来年大学に合格したらこの本をあげる」という約束は、法律的には停止条件付贈与契約になります。この場合、「本をあげる」という贈与契約は、大学合格という条件成就によって効果が発生し、不合格という条件不成就によって贈与契約による法律効果が発生しないことになります。つまり、合格すると実際に本をあげなくてはいけませんが、不合格の場合には本をあげる必要がなくなるわけです。
二つ目の「この本を貸してあげるけれど、来年大学に合格したら返して」という約束は、解除条件付使用貸借契約になります。この場合、「本を貸す」という使用貸借契約の効果は、条件成就によって消滅し、条件不成就によって存続することになります。つまり、合格すれば本を返さなくてはいけませんが、不合格ならばそのまま借り続けてもいいということですね。

4.特殊なもの

最後に、特殊な事項を条件とした場合についてみていきます。
「Aを殴ったら10万円あげる」や「10万円あげるがAを殴ったら返せ」というように、不法な行為を条件とした場合は、その条件付法律行為はもちろん無効ですし(民法132条前段)、「Aを殴らなければ~」というように、不法な行為をしないことを条件とした場合も同じく無効と規定されています(同条後段)。
また、「1年間何も食べなければ100万円あげる」といった、明らかに不可能な事項を停止条件とした場合、その停止条件付法律行為は無効となります(133条1項)。ただし、「100万円あげるが1年間何も食べなければ返せ」というように、不可能な事項を解除条件としていた場合には、その法律行為は無条件とされ(同条2項)、はじめから条件が付されなかった法律行為と同様に取扱われることになります。

(作成者 小南 幸右)