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2007年06月08日 民法入門33 「来週までには完成させます・・」

期限  ―民法入門33―
「来週までには完成させます・・」

1.はじめに

みなさんこんにちは。今回は期限についてのお話です。
期限は、前回お話した条件ととてもよく似ています。契約など法律行為に付ける当事者間での特約である点や、法律効果の発生あるいは消滅を将来の出来事に委ねる点は、両者とも同じです。しかし、条件が「将来発生するかどうかが不確実な事実」をその内容とするのに対し、期限は「将来必ず発生する出来事」を用いるという点で大きく異なっています。
具体例をあげてみましょう。
「来年大学に合格したらこの本をあげる」というのは、前回述べたとおり「停止条件」が付けられた法律行為になります。では、この「来年合格したら」の部分が「来年の3月1日」となっていた場合はどうでしょう。「来年の3月1日」は必ず訪れる事実であることから、条件とはいえませんね。このような、将来必ず起こる出来事を法律行為の特約として用いるものこそ、今回のテーマである「期限」を付けた法律行為になるのです。
以下、期限の意義と効果についてみていきましょう。

2.期限の意義

「期限」とは、契約などの法律行為に付ける当事者間での特約をいい、法律行為の効果の発生あるいは消滅を、将来確実に発生する出来事に委ねることをその内容とします。
ここでの「将来の出来事」は、将来発生することが確実であればよく、「来年の3月1日」といった、到来する時期が既に確定しているものの他に、「次に桜が咲いた日」というように、必ず到来するがそれがいつなのかわからないものでも「期限」として認められることになります。前者を「確定期限」、後者を「不確定期限」といい、それぞれ区別しています。
また、条件の場合と同じく、期限についても、法律効果の発生、消滅それぞれに関して付けることができます。法律効果の発生に関するものを「始期」、消滅に関するものを「終期」といいます。

3.期限到来の効果

期限を付けた法律行為は、その期限が到来することで、始期であれば効果が発生し、終期であれば効力が消滅することになります。
条件と違って、「将来発生することが確実な出来事」を「期限」の内容としていることから、期限が到来しなかった場合については、基本的に考慮する必要はありません。

4.「出世払い」

「条件と期限は大きく異なる」とはじめに述べましたが、実際には両者の区別が困難なケースがあります。その最たる例が「出世払い特約」です。

(例)Aは甥のBに懇願され100万円貸しましたが、すぐに返してもらうのは酷と考え、「Bが将来出世したら返してくれ」との約束を交わしました。
しかしBは一向に真面目に働こうとしません。見かねたAはBにお金の返済を求めましたが、Bは「まだ出世していない」と言い、返済に応じません。
Aは100万円を返してもらえるのでしょうか?

ここで問題となるのが、AB間の契約(金銭消費貸借)に条件が付けられたのか、期限が付けられたのかという点です。 
「出世する」という出来事は、あくまでも不確実な事柄であるとして、条件であるととらえることができます。その一方で、いずれ必ず到来するがその時期が不明確なだけであるとして、不確定期限であるともとらえることができます。 
これを条件ととらえると、「出世した」という「条件成就」によらない限り、Aはお金を返してもらえなくなります。言い換えると、Bの出世が絶望的になった場合には、AはBにまるで100万円をあげたようになってしまうのです。しかし、「出世したら返せ、しなければ返さなくていい」というのは、あまりにも都合が良すぎますね。 
この問題は裁判上でも争われたことがあります。判例は以下のように判断しています。つまり、「出世したら返せ」という約束は、あくまでも返済の時期を「出世するかどうかが判明した時点」という、将来到来する不確定な時期まで猶予しているに過ぎないと解釈し、これを不確定期限を付けた契約であるととらえるのです。 
先の例に則せば、仮に出世しないことが明らかになれば、期限到来によって直ちに返済すべき時期が訪れ、BはAに100万円を返さなくてはいけなくなるのです。 

(作成者 小南 幸右)