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権利の窓

2009年12月21日 民法入門49 「今もっているのは本当に自分のもの?」

占有権の取得  ―民法入門49―
「今もっているのは本当に自分のもの?」

はじめまして。「新・権利の窓」第49号は、私、矢野美保が担当させて頂きます。宜しくお願い致します。
さて、今回のテーマの「占有権の取得」について具体的な例を挙げながら、ご説明していきたいと思います。

1. 占有の譲渡(占有権移転の合意)

占有の譲渡の種類は、四つあります。一つ目は「現実の引渡」です。例えば、AさんはBさんから、100円で漫画を買い、受け取りました。その場合、現実の引渡に当たります。要するに、あげる人と貰う人の間で物が現実に引き渡されることをいいます。二つ目は「簡易の引渡」です。例えば、AさんはBさんから車を借りていました。Bさんは、新しく車を買い替え、Aさんに貸している車を20万円で売ることにしたとき、Aさんは、わざわざBさんに車を返して、お金と車を交換しなくても、AさんがBさんにお金を支払うだけで済んでしまう場合をいいます。三つ目は「占有の改定」です。占有権だけが移転して、物を所持している人は変わりません。例えば、AさんはBさんから車を買ったが、まだ駐車場を借りていないので、そのままBさんの家の駐車場に止めておく場合をいいます。Bさんは、Aさんの占有代理人として預かっていることを言うことで(意思表示のみによって)、Aさんにその車が譲り渡されたことをAさんが知り、Aさんはその車の占有権を取得するのです。四つ目は「指図よる占有移転」です。例えば、Aさんは今まで、Cさんの家の駐車場に車を止めさせてもらっていましたが、その車をBさんに売ったので、AさんはCさんに、今度は、Bさんの為に車を預かってほしいと頼んで、Cさんが承諾した場合が指図による占有移転に当たります。

2.占有権の承継

(1)一般承継
占有者が死亡した場合、相続人が占有権も相続します。会社が合併した場合の新会社についても同様です。
 相続人が相続の開始を知らなくても、占有権の相続が認められます。相続は、被相続人の地位を全面的に引き継ぐものだからです。

(2)占有の承継
占有の承継に基づいて、新占有者が現実に占有を開始すると、新占有者の占有は、自己固有の占有と、承継した占有との両面を有することになります。この場合、自己固有の占有だけを主張しても構いませんし、承継した占有と自己の占有を合わせて主張することもできます。ただし、承継した占有も合わせて主張するときは、悪意(他人のものと分かっていて占有している場合など)がある占有も承継します。
 例えば、AさんがBさんの所有の土地を13年間悪意で自主占有し、その後、Aさんが亡くなり、Aさんの子供のCさんが引渡を受けて、Aさんが悪意で自主占有していることは知らずに更に7年間善意無過失で自主占有を続けました。取得時効の完成には、善意無過失の場合は10年、悪意の場合には20年の占有継続が必要です。Cさんは、善意無過失ですが、自己固有の占有だけを主張すると、7年しか占有していないので、土地を時効取得できません。これに対して、Aさんの占有期間も合わせて主張すると、Aさんの「悪意」も引き継いでしまいますが、通算して20年の占有が肯定されるので、土地を時効取得することができるのです。

3.即時取得

即時取得とは、動産を占有している無権利者を真の権利者と過失なく誤信して取引をした者に、その動産について完全な所有権または質権を取得させる制度です。物を取引行為(売買や譲渡)によって占有し始めた者はその権利を取得する事ができます。
 即時取得の要件ですが、まず対象が動産である事です。不動産や、動産であっても登録された自動車には即時取得はありません。(登録していない自動車には適用があります)他の条件として取得する者が平穏かつ公然に占有し始め、善意無過失であり、物をあげる側 (売買の場合売る人)が無権利者(権利があれば、普通に取引をすればいいので、即時取得は関係ありません。無権利とは、例えば、ある物を他の人から借りていただけの人や売買契約が解除されたのに自分の物だと偽っている人など)である事、また、物の引渡しは、外部から物が引き渡されていると分かるよう、「占有改定」以外の方法です。また、盗品や落とし物(例として、AさんからBさんが絵を盗んだとします。その絵をCさんがBさんから買った場合)の取引のときは、即時取得はないので、Cさんの所有物となりません。Aさんが自分のところから盗まれてから、2年以内であればCさんに対して返還請求が可能です。ただし、Cさんが公の市場(オークションや古本屋など)で購入した場合には、AさんはCさんが購入した代金をCさんに払わなければ取り返すことができません。
占有権の取得については以上です。次回は、取得した占有権の効果・消滅について、ご説明致します。

(作成者 矢野 美保)