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権利の窓

2010年01月15日 民法入門50 「自分のものを守る為に」

占有権の効力・消滅  ―民法入門50―
「自分のものを守る為に」

「新・権利の窓」第50号のテーマは「占有権の効果・消滅」です。占有権を取得したとき、その占有権を保護する権利、また、占有権の消滅する原因について、ご説明していきたいと思います。

1. 権利の推定

占有者が占有物について行使する権利(本権(所有権や地上権など)や、賃借人や受寄者の権利などの債権など、占有をなすことを正当とするすべての権利)は、適法に有するものと推定されます。占有者に所有権がないと主張する者は、その事実を証明する責任を負います。

2.占有訴権

占有物に侵害があった場合、占有者が占有権の効力として、これを排除することを請求しうる権利のことをいいます。以下の三つの訴えがあります。

(1)占有保持の訴え
占有者がその占有を妨害されたときは、占有保持の訴えにより、その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができます。 例えば、Aさんの敷地に隣の家のBさんの庭木が倒れこんだ場合、「占有保持の訴え」により倒木除去を請求することができます。占有保持の訴えは、妨害の存する間、又はその消滅した後一年以内に提起しなければなりません。ただし、工事の場合は例外があり、例えば、Bさんが庭にアスレチックを作ろうと思ったが、自分の庭が狭かったので、Aさんの敷地内に跨ってアスレチックを作る工事をし始めた場合にAさんが訴えるには、その工事が始まってから一年以内か、アスレチックが完成するまでに提起しなくてはいけません。工事が一年以上続いてからや、完成してからでも訴えを認めてしまえば、社会経済上損害が大きくなってしまうからです。

(2)占有保全の訴え
占有者がその占有を妨害される恐れがあるときは、占有保全の訴えにより、その妨害の予防、又は損害賠償の担保を請求することができます。 例えば、Aさんの敷地に隣の家のBさんの庭木が倒れそうな場合、「占有保全の訴え」により倒木防止措置を求めることができます。占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、提起することができます。しかし、工事の場合は例外で、例えば、Bさんが自分の敷地内に公園を作る工事をしていて、そこに公園ができたら、Aさんの敷地内を通らないと公園の中に入れない場合に、Aさんが訴えるときは公園を作る工事を始めてから一年以内か、その工事が完成する前に提起しなければなりません。

(3)占有回収の訴え
占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができます。 例えば、BさんがAさんの自転車を盗んだ場合、盗人の占有も保護され、Aさんが実力で奪い返すことは認められなくなります。そこでAさんが合法的に自転車を取り戻す権利として、占有を奪われたことに対して、占有回収の訴えにより自転車返還を請求することができます。占有権は、本権(所有権など)に関係なく、占有している事実を保護する権利なので、自分の勘違いや相手に騙し取られたりした場合では請求することはできません。自分の意思に基づかないで奪われたときのみ占有回収の訴えは提起できるのです。また、占有物を盗んだ人から、盗んだことを知らずに買って占有している人に対しては、提起することができませんが、もし盗んだ事実を知っていたときは提起できます。

3. 占有権の消滅

占有権は、占有者が占有の意思を放棄し、又は占有物の所持を失うことによって消滅します。
 代理人によって占有をする場合の占有権の消滅は、本人が代理人に占有をさせる意思を放棄した場合(1)、
代理人が本人に対して、以後自己又は第三者のために占有物を所持する意思を表示した場合(2)、代理人が占有物の所持を失った場合(3)です。
例えば、Aさんが自分の車を、Bさんに貸している場合、Aさんは、自分で直接車を占有していません。しかし、Bさんを通じて間接的に占有をしています。このような場合に、Aさんが、Bさんに対して占有させる意思を放棄した場合が(1)です。次に、BさんがAさんに対して「これは、もともと自分の車だった」と言い出した場合、又は、BさんがAさんに「Cさんから聞いたけど、これはCさんの車らしいね。Cさんから貸してもらえることになったよ。」と言った場合が(2)です。最後に、車が交通事故で燃えてしまったなどの理由で、Bさんが車に対する占有を失ってしまった場合が(3)です。いずれにしても、Aさんの代理占有は消滅します。

おわりに

占有権は、物に対する支配をそれなりに保護して秩序維持をしようとする制度で、一般的には分かりにくいですが、知っておくと実生活で少なからず役に立つのではないかと思います。

(作成者 矢野 美保)