相続・遺言・成年後見はこちらからどうぞ 相続遺言サポートオフィス ゆずりは 一般社団法人 日本想続サポートセンター
お問い合わせはこちらから

権利の窓

2011年10月03日 民法入門56「登記されない担保物件」

民法入門56「登記されない担保物件」

今回のお話は留置権についてです。

 

1.留置権とはどのような権利でしょうか?

 

事例

個人A(以下「A」という)が持っているバイクが故障したので、近所にあるバイク屋B社(以下「B」という)に対してバイクの修理をお願いし、BAの修理依頼を請負いました。

Bはバイクの修理をAとの合意で決めた期日までに行い、修理したバイクを引渡す日がやってきました。

 

上記事例においてAB間にバイクの修理を内容とする請負契約が成立します。

Bがバイクの修理を行った場合、BAに対して、修理代金を支払うよう請求することができ、ABに対して修理されたバイクを引き渡すよう請求することができます。

 BからすればAからの引渡請求にただ応じてしまいますと、修理代金をもらい損ねてしまう可能性が残ります。Bは折角メーカーに部品を取り寄せて、時間をかけてバイクを修理したにもかかわらず、修理代金をもらい損ねてしまってはたまったものではありません。

この時、BAに対して「修理代金を支払わない限り、バイクを引き渡すことはできません。」と言うことができます。なぜ、BAに対してこのようなことが言えるのかというと、BA所有のバイクに対して留置権という物権を持っているからです。

 このように、留置権とはAに対して、修理代金を支払わない限り、バイクを返してもらえないという不便を強いらせることによって、間接的にAの負う修理代金債務の弁済を強制することができる権利です。

 

2.留置権は不動産を目的物とすることができますか?

 

上記事例においては、Aのバイクという動産についてでしたが、留置権は土地・建物といった不動産をその対象物件とすることもできます。

それでは売買による所有権移転登記、融資による抵当権設定登記といったように留置権が成立することによって、登記がなされるのかというと、登記はできません。

このように登記をすることができないのは、留置権を主張するということは、「対象物件の引渡しを拒絶する」ことであり、対象物件を継続して持っておくことをその成立要件としているためです。

対象物件の継続占有をその要件としているので、登記ほどでないにせよある程度公示は図られてると考えるわけです。

 

3.留置権と抵当権の優劣はどうなってるのでしょうか?

 

抵当権者C(以下「C」という)の抵当権が設定されている土地の所有者A(以下「A」という)が同土地上に建物を建築することとし、建築請負業者B(以下「B」という)が工事を始めました。ところが、建築途中でAは建築請負代金を支払えなくなり、建物建設請負契約が解除された場合、Bの建築した建物のために、BCに対して、土地について留置権を主張することができるでしょうか(ここでいう留置権とは「商事留置権」をいいます)。

この問題は留置権の成立要件のひとつである継続占有が問題になった事例でありますが、この時、Bのために土地について留置権が成立するとBは抵当権者Cに先んじて事実上の優先弁済を受けることになり、Cは抵当権に基づき競売申立てをしても最先順位で債権を回収することができず損害を被ることになります。

裁判例としては、かつては建築請負会社の留置権を認める裁判例も見受けられたようですが、最近では、留置権が認められるための占有そのものを認めないで、留置権の発生を否定する裁判例が多いようです。

 

4.倒産手続き上での留置権の取扱いは?

 

留置権は、本テーマで扱っている留置権(以下「民事留置権」という)と商人間の商取引によって生じた留置権(以下「商事留置権」という)とで、倒産手続上その取扱いが異なります。

破産では、民事留置権は消滅し、目的物を破産管財人に引渡さなければならず、留置権者は他の一般債権者と同じく、破産債権者として配当を受けることになります。

これに対し商事留置権は特別の先取特権とみなされ、別除権(別除権=登記等の対抗要件を備えた担保権で、倒産手続によらないで担保権本来の権利行使に基づき優先弁済を受けることのできる権利)として破産手続によらない権利行使が認められます。

民事再生及び会社更生では、民事留置権は別除権または更生担保権とはならないものの、その効力は消滅することはなく、留置権者は引き続き目的物を留置することができます。

また商事留置権は別除権または更生担保権としては保護されますが、特別の先取特権として取り扱われることはありません。その結果、留置権者は、債務者からの引渡請求に対してこれを債務の弁済があるまで拒否することができ、他の担保権者による担保権実行に対しては、事実上の優先弁済を受けることができることになります。

 

 (作成者:山本 芳昭)