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2014年02月09日 経営者と成年後見制度

経営者と成年後見制度

1.はじめに

日本の高齢者人口はご承知の通り年々増加の一途をたどっております。

高齢白書を見ますと、平成23101日現在の日本の人口は、12780万人、そのうち65歳以上の高齢者人口は、過去最高の2975万人、総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は、23.3%とされております。

そして、ご承知の通り、高齢化は中小企業にも及んでおります。

中小企業においては、オーナー様、経営者様の意思決定権限は強く、強力なリーダーシップのもとに積極的な会社経営が行われていたところでありますが、経営者の判断能力が低下する、あるいは判断能力を失ってしまった等の事態が発生しますと、筆頭株主であり、かつ代表取締役が欠ける状況となり、株主総会での意思決定ができなくなるという、会社としての意思決定が全くできないという、機能不全の事態に陥ることとなります。

その結果、経営活動も停止せざるを得なくなり、最悪は倒産という事態になることも考えられます。

そこで今回は、後継者がいまだ不在または、育成中という状況下で、経営者が判断能力を失ってしまった場合の対応方法についてお話したいと思います。

 

2. 対応手続の流れ

経営者が判断能力を失ってしまったという事態が生じた場合、当然のことながら、経営者に代わって誰かが会社経営を続けていかなければなりません。

そこでまず経営者のピンチヒッターを決めて、株主総会の機能を回復させて、さらに当該経営者の代わりとなる後任者を取締役として選任し、そのあとの取締役会で、代表取締役を選定するという流れで手続きを進めていくことになります。

 

3 成年後見人

成年後見人とは、判断能力を失った本人(被後見人)に代わって、本人の生活、療養看護および財産の管理に関する事務を行う代理人のことをいいます。

成年後見人は、本人に代わって財産に関する法律行為について包括的な代理権を与えられております。

経営者が判断能力を失った場合、まずは後見開始の審判を申立て、成年後見人が選任された後、当該成年後見人が、本人に代わって株式についての議決権を行使して、株主総会にて、後任の取締役を選任することになります。

但し成年後見人は本来、本人の財産管理、身上監護の為に選任された代理人であって、会社経営についての知識を持ち合わせた者なるとも限りませんので、会社を取り巻く関係者を含めての利害の調整役には向かない恐れがあります。

 

 ポイント! 成年後見制度は、「財産管理」のための制度にすぎない。

 

4経営者の職務代行者

経営者に対して後見開始の審判が出ますと、取締役としての経営者は、取締役の欠格事由に該当し、取締役を退任することになります。

この時、取締役の員数が法律または定款で定める員数を欠けることになった場合、株主としての経営者は、被後見人となりますので、後見人が代わりに株主総会を開催し、後任の取締役を選任できればよいのですが、株主総会の開催に時間がかかる、候補者の選定に時間を要する場合、利害関係人の申立てに基づいて一時役員の職務を行うべき者(「職務代行者」といいます。)を裁判所に選任するよう求めることができます。そして、会社は当面の間、この職務代行者のもとで事業を運営していくことになります。

 

 ポイント! 株主総会を開催せずに役員を選任する方法があります。  

 

5 任意後見制度

最後に、任意後見制度について少しご説明させて頂きます。

こちらは、経営者が判断能力が低下する前に、「予め」備えておくための制度になります。これに対して、前記した後見制度は、法定後見後見制度といいます。

どういうことかといいますと、経営者が事前に後見人となる方と、任意後見契約を締結することに違いがあります。

「契約」でありますので、「誰」を後見人とし、「どういったこと」を代理させるか、契約内容として記載しておくことができますので、法定後見制度を利用した際の懸念事項はなくなります。

しかし、任意後見人を監督するための任意後見監督人が選任されること、任意後見契約は、家庭裁判所への申立てにより発効しますが、発効のタイミングについては、経営者の意に反したタイミングでなされぬように、慎重に進める必要があります。

 

ポイント! 任意後見制度の発効には慎重さが求められる。