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権利の窓

2005年11月15日 民法入門2 「山田先生の事件簿 其の一」

権利の主体(1)自然人 意思能力と行為能力 ―民法入門2―
「山田先生の事件簿 其の一」

「あー終わった、終わった。今日も一杯行くかー」
最近すっかり秋らしくなってきた。日が暮れるのも早い。明日は友人と奈良に紅葉狩りに行く予定だ。今週も無事、一週間が終わった。
明日の紅葉狩りに想いをはせながら帰り支度をしているところ、電話が鳴った。
「んー。こんな時間に誰や?!」(まだ、夕方の六時過ぎである。)

山田 「はい、山田事務所ですが」
中畑 「あーどーもー。ビクトリー不動産の中畑です。お世話になってますー。先生今ちょっとよろしい?
山田 「手短にどうぞ」(中畑氏はとにかく長話で有名であった。)
中畑 「先日先生にお願いした、売り主が19歳の未成年者で不動産の売買取引の件、どうもですー。」
山田 「いやーなんのなんの・・・で?」
中畑 「あの取引は、売り主が法学部の大学生で取引現場に自分も参加したいということやったから、両親から売買契約をしてもええという同意書をもろて、ほんで自分の実印の登録もして、先生に登記手続きしてもらいましたなぁ。」
山田 「あーそうだった。そうだった。なかなか勉強熱心な学生さんだったね・・・で?」
中畑 「で、また同じような案件があんねんけど今度の売り主さんはな、小学3年生ですわ!」
山田 「なんとまぁ!!!」
中畑 「今回はさすがにこの子が役所で実印登録していうこともでけへんし、学校があるから取引に参加すんのもむりやわー。まぁ両親がこの子の代理人いう形で売却の手続きをしていくことになるわなー」
山田 「その通り」
中畑 「なあ、先生―。未成年者にも親の同意書もろて自分で契約なんかできる子とでけへん子の線引きってどこでんのー?」
山田 「これはやで、なかなか一概にはいえへんけどだいたい15歳ぐらいからやったら、親の同意書もろて売買契約なんかの法律行為ができるとされておるな。まぁ。どんな法律行為をするのか、ものにもよるわな。前回の売り主が大学生の場合なんかは、親の同意したとおりのことを実際理解して行動にうつせるけど、今回の小学生の場合なんかは、親の同意したとおりのことを実際理解して行動にうつせるかどうか、不確かやしな。」
「それに学校があるいうのも、取引に参加でけへん大きな理由やな。」
中畑 「先生―。ありがとうー。よーわかったわー。それからーまだ聞きたいことあってんけど、ん???忘れてしもたわー。またテルするわー。すんません。どーもー。」
山田 「うん。思い出したらまたテル頂戴。」

ふぅー。意外と話短かったなあ。
想い出さんうちに早よ帰ろっ。
山田は勢いよく事務所を飛び出し、シャッターを引きずり降ろした。そのころ中畑の電話は、シャッターを閉める轟音に掻き消され、主不在の事務所に空しく鳴り響いていた。

中畑 「逃げよったなー」

終わり

お気づきでしょうが、この事件簿はすべてフィクションでありフィクション以外のなにものでもございません。

(作成者 岩間 巨敏)