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2006年11月21日 民法入門26 「代理人って誰でもいいんですか?」

代理 代理行為 代理人の能力 ―民法入門26―
「代理人って誰でもいいんですか?」

今回は、代理人の能力についてお話します。

民法第102条によりますと、「代理人は、行為能力者であることを要しない。」と規定されています。

補足しますと、代理人は、意思能力者であれば足り、行為能力者であることを要しないという意味になります。

意思能力とは、自己の法律行為の結果を弁識するに足りる精神能力をいいます。例えば、小さい子供や泥酔者がした行為に法的な拘束力を認めるのは不当といえるでしょう。

行為能力とは、法律行為を単独で有効に行うことができる能力をいい、その行為能力を制限された者を制限能力者といいます。民法上、未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人がいます。 

102条はこのように考えています。 

代理の効果は全て本人に帰属することになるため、代理人に対して何の不利益も及ぼさないし、本人としても制限能力者(例えば、未成年者)と知って代理人にした以上、その不利益も甘んじて受けるべきといえます。 

☆例題で考えてみましょう。
本人Aと代理人Bは、Aの土地売却を内容とする委任契約をBとの間で締結し、Bにその旨の代理権を授与しました。その後、BはCと土地の売買契約を締結しました。

この場合、民法第102条により、本人Aは能力の制限を理由にCとの売買契約を取り消すことはできません。

ただ、Bが単独で、Aと委任契約を結んでいれば、Bは能力の制限を理由に委任契約を取消すことはできます。未成年者が法律行為をするには、原則として、法定代理人の同意が必要だからです(4条1項)。

ここで、Bが能力の制限を理由に委任契約を取消すと、Bの代理行為にどのような影響が生じるでしょうか。つまり、委任契約と授権行為との関係が問題となります。

まず、本人と代理人との間に委任という内部関係があったとしてもそれは常に代理権を伴うとは限らない等との理由で委任契約と授権行為は別個の行為と考えられます。

次に、民法は委任と代理とを判然と区別していないことから授権行為の性質は委任に類似した一種の契約と考えられます。

さらに、委任契約が消滅したのになお代理関係だけを存続させるのは当事者の通常の意思に反するから委任契約が取消されると授権行為も当然に効力を失うと考えられます。

従って、BがA・B間の委任契約を取消すと、授権行為も遡って効力を失ってしまい、B・C間の売買契約は無権代理行為となるとも思えます。

しかし、Bが能力の制限を理由にAとの委任契約を取消した場合には、代理関係を将来に向かって終了させて既になされた代理行為には何ら影響を及ぼさないと考えられます。

なぜなら、既になされた代理行為が無権代理行為になるとすると、取引の相手方に不測の損害を与えるのみならず、102条の趣旨を没却することになるからです。

以上は、ひとつの考え方であります。

つまり、代理人は誰でもなれるってことではないということですね。

(作成者 梶原 亮)