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2007年01月15日 民法入門28 「表見代理??」

代理 表見代理 ―民法入門28-
「表見代理??」

今回は前回の無権代理の一種である「表見代理」(ひょうけんだいり)をご紹介します。その前に前回の無権代理のおさらいを軽くしてみましょう。無権代理とは、代理権が無い人が代理行為を行うといったもので、この場合の代理行為は本人が追認しなければ効力を生じない、というものでした。本人が知らない間に本人に代わって行為をするのですから当然です。しかし、無権代理行為をされたことについて本人に落ち度があった場合はどうでしょうか。相手方はが全くそのような状況を知らないで取引したのに、そんな場合にまで本人を保護するのはもあまりに不公平です。そこでこのような状況で本人と相手方の均衡を保つ制度が「表見代理」なのです。これからその表見代理が適用される3つのパターンを紹介します。

1.代理権授与に関する表見代理

例を挙げてみましょう。あなたはコピー機が欲しいと思っています。そこで専門業者の山田さんにその旨を伝えたところ「うちの田中を代理人として向かわせます」との連絡がありました。しかし実際は契約の代理権を与えていませんでした。この山田さんの言葉を信じて田中さんに売買代金を払った後、田中さんは代金を持って姿を消してしまいました。この時あなたは山田さんにコピー機を引き渡せと請求することができるのでしょうか。山田さんは「田中さんにこのコピー機の売買に関して代理権を与えていないから引き渡すことが出来ない。」と言ってきました。あなたは田中さんが代理人だと聞いていたからお金を払ったのに、コピー機を引き渡してもらえないのは納得できないでしょう。そこで、
①本人である山田さんが代理権を与えていないにも拘らず、田中さんが代理人だとあなたに伝えている。
②あなたは田中さんに代理権があると信じ、その事について過失がなく、当該売買契約を締結した。
上記の場合には、あなたは表見代理を主張して、代理権を与えたとする範囲で本人に対して無権代理人がした行為について責任を追及(コピー機を引き渡せ、と主張)することが出来るのです。

2.権限外の行為の表見代理

これも1.の例を応用して見てみましょう。上記の例を「実は山田さんは田中さんに『賃貸』の代理権を与えてはいたが、『売却』の代理権までは与えていなかった」に変えてみます。無権代理を使ってそのまま解釈するならこれも山田さんが保護されそうですが、常識で言えば山田さんと田中さんの関係を知らなければこの関係は気づきません。あなたは「欲しい」のに、後から「貸すだけ」と言われても困ります。これも、
①山田さんは田中さんに何らかの権限を与えていた。
②田中さんの行為は与えられた権限を超えている。
③あなたは田中さんに代理権があると信じ、その事について過失がなく、当該売買契約を締結した。
上記の場合なら、あなたは表見代理を主張する事で代理人の権限外の行為、つまり「賃貸」ではなく、「売買」契約の成立を主張出来ます。

3.代理権消滅後の表見代理

これもの1.の例を少し状況を変えて見てみましょう。先の例を「実はこの田中さんは山田さんの代理人の地位を既に失っていて、しかも山田さんの代理人である証書等を未だに持っており、まだ山田さんの代理人のような外観を持っている」と変化させてみます。やはり無権代理で山田さんが保護されそうですが、あなたとしても田中さんを代理人と信じていたのに、山田さんの不注意のせいでコピー機を引き渡してもらえないのは合点がいきません。これも、
①上記のように代理権は失っているが、山田さんの責任であなたが代理人と信じる外観が残っている。
②あなたは田中さんに代理権があると信じ、その事について過失がなく、当該売買契約を締結した。
上記の場合にもあなたは表見代理を主張し、今回のケースの無権代理(田中さんの代理権消滅を理由に山田さんとあなたの契約の不成立)でも契約成立の主張も出来ます。

「表見代理」の3つのパターン、これが全てではございませんが、如何でしたでしょうか?これまでの例をまとめますと、この「表見代理」とはあなたと山田さんを比較し、代理人を名乗る田中さんが代理権を持つと信じ、かつ過失がない等の一定の条件を満たすのならば山田さんからあなたを保護する制度なのです(ちなみに相手は表見代理を主張することも、無権代理人に責任追及するかを選択することが出来ます)。

(作成者 松井 大祐)