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権利の窓

2008年02月07日 民法入門39 「物権ってなーに?」

物権の意義・客体・種類 ―民法入門39―
「物権ってなーに?」

みなさん、こんにちは。今までは民法の中の総則と呼ばれるところのお話をしてきましたが、今回からは「物権」についてのお話をしていきたいと思います。今回はタイトル通り物権とは何か?というお話をさせて頂きます。
さて、「物権」という言葉を聞いたことがありますか?物権とよく比較して使われる言葉が「債権」です。物権と債権だったら、債権のほうが聞き覚えがあるかもしれませんね。ニュース等で「不良債権」、「債権回収」といった言葉を聞いたことがあるでしょう。なので、物権のほうがイメージするのが難しいかもしれません。

物権も債権も「権利」です。二つの権利の違いを簡単に説明すると・・・
物権 物に対して~できる権利
債権 人に対して~できる権利
           ~してもらえる権利

今回のテーマは物権なので、債権についてはまた今後詳しく説明させて頂きます。

物権は、物に対する権利です。(「物」に関しては2006年3月2号で説明していますので参照して下さい。)少し、法律用語っぽく説明すると、物を直接的、排他的に支配することを内容とする権利、それが物権です。(直接的、排他的という言葉が物権の中で重要なキーワードです。)そういわれてもピンとこないですよね。例えば、私たちの生活にもっとも馴染み深いものとして所有権があります。

所有権者は原則として自由に、物を使用、収益、処分することができます。例えば、車を持っている人(所有者)は、それを自由に使用することができます。もちろん、その車を友人に売ったり、必要でなくなったら廃棄することもできます。これが物を直接的に支配できるということです。

ちなみに、一つの物の上には、原則として、同じ内容の物権が二つ以上成立することはありません。(法律用語で、「一物一権主義」といいます。)例えば、ある1台の車について、AさんもBさんも自分が所有者だと言っているとします。その1台を二人で一緒に持っている(「共有」といいます。)のであれば問題はありませんが、どちらも単独で所有権を持っていると主張すれば、どちらが車を所有できるのでしょうか。どちらも使用することができなくなるかもしれません。困ったことになりますね。
このことを逆に考えると、一つの物権が成立する対象物は一つの独立した物でなければならないということになります(但し議論の多い所ではあります。)。

次に、排他的に支配するとはどういう事かというと、例えば先の例で、Aさんが真の車の所有者であるとします。それなのにBさんが車を奪ったならば、Aさんは返してもらうよう請求することができます。Bさんが車の使用を妨害しているなら、Aさんはその排除を請求することができます。

さらに、物権の説明をしていくなかでもう一つ重要なキーワードがあります。それは「物権法定主義」です。民法175条で、物権の種類、内容は、法律により一律に定められていて、当事者が新しい物権の種類をつくったり、法律で定められた内容を変更することは認められない、とされているのです。

例えばある人が、「私の持ち物の所有権は永久に移転できないものとする!」とある日言い出したとします。そしてその変更が世間に通用する行為だとすると、そのような権利の変更があったとは知らずにその人から物を買った人は、所有権を得られない事になります(そもそも「買う」といった行為が出来なくなりますが)。また、そのような権利を持っている人が亡くなっても、相続ができないとしたらどうなるでしょう。所有者不明の不動産等が世の中で増えていくことになります。このように当事者が好き勝手に権利をつくったり、内容を都合のいいように変更したりすると、生活していく上でひどい混乱が生じ、取引上の安全を図ることができなくなります。そのためにこのようなルールがあるのです。

では、具体的に物権にはどのようなものがあるかについては、民法は10種類の物権を認めています。それぞれの物権に関しては、今後詳しく説明します。

以上が物権に関しての説明です。途中難しいところもあったかと思いますが、物権について少しでもイメージをつかんで頂けたら嬉しく思います。

(作成者 後藤 彩)