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権利の窓

2008年09月26日 民法入門45 「明認方法」

明認方法  ―民法入門45―
「明認方法」

大分涼しくなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか?さて、前回は、物権変動の対抗要件について不動産には「登記」、動産には「引渡し」が必要である旨をご説明しました。では今回は、土地上の樹木等はどうなるの?ということをお話させていただきます。

1.樹木(立木)等の公示方法は?

不動産、動産の公示方法はこれまでお話ししてきたとおり(詳しくは、新・権利の窓第42号~第44号参照)ですが、樹木(立木)や温州蜜柑のような木になる果実等(樹木の集団については、立木法によって登記が認められるので除きます。)については「登記」という制度はありません。ただ、これらを別個独立して譲渡する場合に、公示方法もなく、第三者に対抗できないのは困ります。そこで「明認方法」という公示方法があります。この明認方法は民法に規定はありませんが、慣行上認められてきたもので、判例も古くから認めています。以下、この明認方法について詳しくお話していきます。

2.明認方法の仕方

明認方法は、樹木等が誰の所有なのかを公示する制度です。そこで登記では、前所有者や所有権取得の原因も公示しますが、明認方法では、これらを明らかにする必要はありません。
具体的には、立木の木の皮を削って所有者の名前を書く。立て札を立てておいたり、ロープでくくったりして誰の所有なのかを示しておく。等の方法によって公示します。登記と異なり随分簡易な方法ですよね。ただ、ここで注意を要するのは、明認方法は継続していないといけないということです。例えば、Xが所有する樹木をAに売り、Aは立て札を立てて自己の名前を書いておきました。その後5年経過してその立て札が無くなってしまっています。そこでXはさらにBに売りBが明認方法をすれば、Aはその樹木の所有権をBに対抗できないことになります。このように明認方法は、第三者(B)が利害関係を有するに至った時点(XB間の売買契約成立時)において存続していないと対抗力は認められません。登記と比べて、公示方法としては不完全なものといえるでしょう。

3.明認方法の対抗力

明認方法は、登記と同格の対抗力を有します。したがって、原則として、登記の対抗力に準じて考えることができます。明認方法相互間、明認方法と土地の登記との優劣関係は、先にそれを備えたほうが優先します。立木を例にとり、具体的に見てみましょう。

ケース1
AがX所有地上の立木をXから譲り受けた後、BもXから譲り受けた場合。

⇒先に明認方法を施した方が優先する。
Bが先に明認方法を施せば、AはBにその立木の所有権の取得を対抗することができません。

ケース2
AがX所有地上の立木をXから譲り受けた後、Bがその立木を含めてその土地をXから譲り受けた場合

⇒先にBが所有権移転登記をしたときは、その後にAが明認方法を施したとしても、Bが優先し、Aは立木の所有権をBに対抗することはできません。逆に、Bが所有権移転登記をするよりも前にAが先に明認方法を施せば、Aが優先し、AはBに対して立木所有権を対抗することができるということになります。
なお、このケースで、土地とともに立木を譲り受けたBが、立木のみの譲受人Aに「立木の所有権」の取得を対抗するためには、土地について「所有権移転登記」を要することに注意が必要です。これは、明認方法が、土地とは別個に立木のみを譲渡したときに意味を持つものであるからです。よって立木と共に土地を譲渡した場合には、あくまでも土地の登記が公示方法ということになるので、この場合、明認方法は意味をなさないことになります。

(作成者 西野 浩太)